さてあなたがある映画を見て、その音楽をとても気に入ったとしよう。するとそれがほしくなるのが人情。そこで音楽が入っているCD、つまりオリジナルサウンドトラック盤、通称サントラを買おうということになる。その映画がばりばりのメイド・イン・ハリウッドの新作であればまず間違いなくサントラが出ているので大丈夫。しかし世の中そうそう幸運なことばかりではない。たとえばビデオ、リバイバル上映や名画座で旧作を見たりした場合、大変な思いをする可能性がある。私自身サントラ探しもそうだが、映画にかかっているお目当ての音楽を探すというのは、一度どつぼにはまるとかなりとんでもないことになった経験が数多くある。

どつぼその1
サントラ盤は出ているが入手困難
基本的にサントラ盤でミリオンセラーになる可能性はきわめて低いといえる。当然何年かすると廃盤になったりする。そうなったらあとは中古屋さんをまめにまわるしかチャンスはない。邦画「それから」を入手するのにいったい私は何年、そして何軒かかったことだろう(笑) また外国映画の場合、本国では出ていても日本盤が出ていないことも多々ある。その場合は大きなCDショップや専門店、はたまた個人輸入など手を尽くすしかない。こちらの方は廃盤になっていなければチャンスはわりと大きい

どつぼその2
サントラ盤はレコードでは出ていたがCDになっていない
このパターンはかなり多い。私も何本もCD化を心待ちにしている作品があるが、こればかりは致し方ない。レコードでもよいという人はいいが、レコードで美品を探すのは現在ではさらに難しいかもしれない。でもいつかは・・・。

どつぼその3
サントラ盤は出ているが目的の曲が入っていない
これも結構どつぼなパターンで王道。映画ではあったのにぃ!というパターン。普通エンドクレジットを見たいすると使用曲のクレジットがあり、それが既成曲の場合はそのクレジットをチェックすると比較的容易に手にすることが出来るだろう。問題はクレジットされていなかったり、その曲が映画用のオリジナルだった場合だ。たとえばサントラ盤に歌が多数収録されると、インスト曲が1曲しか入らない場合がある。こうなったら悲劇。チャンスはない。その3の変則パターンとして、予告編で聞いて気に入ってサントラ買ったら入っていないというのもある。これもどつぼパターンの王道。

どつぼその4
サントラ盤が出ていない
一番の悲劇がコレである。出ない理由として多いのが売れそうにない、それから音楽関係の権利が複雑でクリアできないというのがある。もうこればかりはどうしようもない。

「ファンダンゴ」手作りサントラCD完成まで

 しかし世の中やろうと思えばやれるのである。そこで今回私が挑んだのは、世の中に1枚しかないサントラをつくっちまえという企画である。きっかけはずーっと前にみた映画「ファンダンゴ」 監督は「ロビン・フッド」のケビン・レイノルズ、主演はケビン・コスナー、そして音楽担当は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のアラン・シルベストリである。この映画現在に至るまでサントラ盤が出ていない。使われていた音楽は何だったんだろうと興味を持ったのは公開直後。しかしこの映画、既成曲がかなり使われている。パンフレットにも何曲かリストに書いてあった。エンディングにもちゃんとクレジットされている。つまりきちんと調べて音源さえ揃えば、自分で揃えられるはずと決意したのは公開直後。今回のルポはそのながーいながーい苦闘の旅路の回想録である(笑)

まずはパンフレットからチェックした。パンフレットにあった記載は以下の通り。
1:SATURDAY NlGHT'S ALRlGHT / ELTON JOHN
2:BADGE / CREAM
3:IT'S TOO LATE / CAROLE KING
4:BORN TO BE WlLD / STEPPENW0LF
5:CAN'T FlND MY WAY HOME / BLIND FAITH
6:EL BRAZO MOCHO / RUBEN VELA Y SU CONJUNTO
7:SPOOKY / OLASSlCS lV
8:SPHERES(7THMOVEMENT) / KElTH JARRETT
9:AY TE DEJO EN SANANTONlO / LOS LOBOS
10:IN‐A‐GADDA‐DA‐VlDA / IRON BUTTERFLY
11:TAKlNG OFF / MlLTON BROWN & THE BROWNlES
12:SEPTEMBER 15TH / PAT METHENY, LYLE MAYES & NAAN VASCONCELOS
13:lT'S FOR YOU / PAT METHENY, LYLE MAYES & NAAN VASCONCELOS
14:FARMER'S TRUST / PAT METHENY GROUP

しかしこのクレジットではどこにどの曲が使われたのかさっぱりわからない。とりあえずどこで使われたかはっきりしているのが1・2・3・4・5・7。でも実はお目当てはその中になく、最後のウェディングパーティで流れる印象的なインスト曲が知りたかった。その当時はインストはすべて映画音楽を担当した作曲家のオリジナルと思いこんでいたので、シルベストリのものなんだろうなあと思っていた。さてこれだけの音源をすべて揃えるためにCDを購入していたらはっきりいってバカにならない。しかも当時の私は貧乏学生。まずはレンタルショップを探し回った。すると比較的簡単に近所のショップで見つかったのが、1・2・3・4・5。残りの曲は全然みつからなかった。その当時はCD-Rはもちろんのこと、MDすらなく、この5曲だけテープに録音し、いったん完成したのが今から1985年のこと。くりかえしくりかえし聞いていた。

やがてビデオが発売された。相変わらず他の曲はみつからず、仕方なくビデオからテープに直接録音して聞いていた。ところがひょんなことから一気に話は先に進む。かなり探しまわってようやく14を知っている方が店員にいるレンタルショップをみつけ、そこにレンタル在庫があったのだ。「おお、この曲は・・・」 なんと予想外、インストだったのだ。この映画はインストの既成曲が使われているという事実に目からウロコ。お目当ての曲ではなかったが、このPAT METHENYが他に作った曲が2曲使われている。ひょっとして・・・と期待を膨らませる。そしてようやくある1件のレンタルショップで12・13が入っているアルバムを発見する。映画を見てからすでに4年たっていた。そしてそれがお目当ての曲であった!

やがてある日のこと。とんでもないことにふと気がついた。エンドクレジットの曲のリストの中に、なんか間に1行入っている。しかも小さな字で。どうもなにかの曲の表記のように思えてきた。まだまだクレジットされている曲があったのだ。どうやらクラシックの曲らしいことはわかるのが・・・読めない(涙) なにせまだ小さな14インチにぼろのビデオデッキだった頃、静止画ではぼやけてしまって、あんな小さな字は判読不能!(爆)クレジットがわかるようになるのはそれからずーっと後のこと、LDプレイヤーを購入し、さらにLDが静止画対応になってからのこと。そこで驚愕の事実を知る。

わかったのは以下の通り
15:DIMITORI SHOSTAKOVICH SYMPHONY #8 (THIRD MOVEMENT)

なんとあの後半のハイライト、パラシュート降下をめぐるどたばたのところでかかる曲が、シルベストリのものではなく既成曲だった。本当にシルベストリの仕事は少なかったことが続々判明(笑) また1993年ごろ、せっっかくMDを購入したのでMDで作り直そうと思い、1・2・3・4・5・12・13・14・15の9曲入りの形で再作成したのだが、やはりCDでほしい。今はせっかくCD-Rというのもある。そこで今回の企画のためにあらためて捜索開始し、CDを作ることにした。ネットなどでさがしまくり、新しく音源を手に入れられたのは7・8。これに関してはネットショップでCDを購入した。

そしていよいよ全11曲入りの完全版をCD-Rで完成。ちゃんとジャケットも作りました。いかがでしょうか? 残念ながら他の曲は結局見つからなかった。9に関しては使われている部分もわかったのだが、他の曲はそれすら判明せず。でもいずれ完全版を作りたい。映画を見てからすでに15年。自分でこうやって作ってしまうことになるとは思いませんでした。大切にこれからも聞いていきたいと思う。


↑お手製ジャケットです!
収録曲目
SATURDAY NlGHT'S ALRlGHT / ELTON JOHN
BADGE /
CREAM
IT'S TOO LATE /
CAROLE KING
SPOOKY /
CLASSlCS lV
SPHERES(7THMOVEMENT) /
KElTH JARRETT
DIMITORI SHOSTAKOVICH SYMPHONY #8 (THIRD MOVEMENT)
BORN TO BE WlLD /
STEPPENW0LF
SEPTEMBER 15TH /
PAT METHENY, LYLE MAYES & NANA VASCONCELOS
lT'S FOR YOU /
PAT METHENY, LYLE MAYES & NANA VASCONCELOS
FARMER'S TRUST /
PAT METHENY GROUP
CAN'T FlND MY WAY HOME /
BLIND FAITH

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