バンダイ版は最終的に全12冊を刊行しました。しかしここに取り上げられている作品は、出版時期前後に公開された視覚効果の技術という点では重要な作品が並び、それらが好きな方には重要な資料となることでしょう。デジタルエフェクツ全盛の現在,オプチカル合成やミニチュアによる撮影などはあまりにもアナログなテクノロジーかもしれませんが、逆に新鮮でもあります。また新版との大きな違いに用語解説が注釈として設けられている点があげられます。そういう意味で初心者にもとっつきやすいと言えるでしょう。なお☆印は文献としての重要度を私なりに評価(☆4つが最高)してみました。入手の際に参考にしていただければと思います。

1 『スター・ウォーズ
 ジェダイの復讐』
記念すべき第1号はSWサーガ『ジェダイの復讐』特集。ILMの視覚効果スーパーバイザー、リチャード・エドランド、デニス・ミューレン、ケン・ローストンの3人の日記形式ということで編集されている。今から読むと非常に原始的な撮影方法だが、その当時の最前線での仕事の内容がわかる。なおこの号の内容はのちに新版の特別号「ILM & STAR WARS」でも読むことができる。 1983.8.20発行 ☆☆
2 『ブレードランナー』
『ブルー・サンダー』


プレゼントします!
詳細はあとがきへ
半年ぶりに登場した第2号はファン垂涎、ダグラン・トランブル率いる視覚効果スタジオEEGが担当した傑作『ブレードランナー』の特集。出版当時に初めて購入したのがこの号で、作品自体がまだ当時は知る人ぞ知る的な作品だっただけに文献自体が珍しかった背景を考えると、私がとびついたのも納得できる(笑)。オープニングやタイレルピラミッド、マット画にはビックリ。なお当時産声をあげたばかりのドリームクエストが担当した『ブルー・サンダー』の記事(F16とのドッグファイトを担当)も10ページ強のっている。なおこの号より編集人が映画評論家として現在活躍中の稲田隆紀氏になり、12号まで担当している。
1983.12.1発行 ☆☆☆☆
3 『エイリアン』
『トワイライト・ゾーン
 超次元の体験』

3号もリドリー・スコット作品『エイリアン』。これも出版当時に購入しました。あのエイリアンがいかに完成するかまでの過程がとても興味深く、この作品が好きな人は必読。『トワイライトゾーン』の方は主にエピソード3と4のエフェクツが中心で、特殊メーキャップマン、ロブ・ボッティンの技の冴えぶりがわかる。余談だがこの作品の楽屋オチ的場面はこの本で知りました。ヒント:タイトルシークエンスの眼球の中とエピソード4のリスゴウびっくりの眼、ふふふ。
1984.2.1発行 ☆☆☆
4 『スター・トレック』
『ブレインストーム』
4号はダグラス・トランブル特集。いろんな意味で注目の2作。『スター・トレック』は米国版創刊号の最初の特集で扱われたもので、劇場版第1作のエフェクツがいかに過酷な状況下だったかがわかる。なので個人的に新たにリリースされたあのDVDの視覚効果やりなおしは本当に可哀想な気がする。『ブレインストーム』の方も悲運のかたまりといった製作状況であったが、さすがにそのあたりのゴシップ的な扱いはしていない。でもきちんとした製作状況であればという思いが行間からにじんでいる。
1984.5.1発行 ☆
5 リック・ベイカー特集
おそらく旧版で最も重要なもののひとつがこれ。『M.I.B.』や『猿の惑星』で知られるメーキャップマン、リック・ベイカーの大特集。彼の生い立ちから『狼男アメリカン』『ビデオドローム』『グレイストーク』を中心にメーキャップマンとしての仕事ぶりまで追っている。監督ジョン・ランディスや、メーキャップマンの巨匠ディック・スミス(『エクソシスト』『ゴッドファーザー』)らとの交友も面白い。できれば『グレイストーク』は単独で特集してもらいたかったが。
1984.7.1発行 ☆☆☆☆
6 『ポルターガイスト』
『ドラゴンスレイヤー』
驚愕のILM特集。しかも作品は『レイダース』や『E.T.』などのヒット作ではなく『ポルターガイスト』(1982年はオスカーの視覚効果部門に、これと『E.T.』と『ブレードランナー』もある本当にすごい年だった)と、劇場未公開ながらドラゴンのエフェクトが話題を呼んでいた『ドラゴンスレイヤー』ということで読み応え充分。前者は表紙にもなっているあのゴースト、内側に崩壊する家などトリッキーなアイディアによるエフェクト満載で、ILMの底力を感じる。今読み返すと、これをすべてオプチカルとフィジカエルエフェクトでやってしまったのが、いかにすごいことか痛感する。後者はデニス・ミューレンとフィル・ティペットが中心にすすめたゴー・モーションの仕組みが詳細に説明されている。
1984.8.25発行 ☆☆☆☆
7 『ライト・スタッフ』
『ゴーストバスターズ』
この号はモーションコントロール全盛の時代にあって、あえてワイヤーワークのエフェクトに挑んだ『ライト・スタッフ』とリチャード・エドランドがILM退社後に、ダグラス・トランブルのSFXスタジオ、EEGを引き継いで発展させたBOSSフィルムの第1作『ゴーストバスターズ』の特集。特に後者は盛りだくさんの内容で、よく短期間でこれだけの技術的なものを完成させられたものだと感心する。注目は当時来日していた米国版編集人にして生みの親、ドン・シェイ氏のインタビューが収録されていること。創刊の背景や当時の状況がうかがえる。
1984.9.30発行 ☆☆
8 『スター・ウォーズ
 帝国の逆襲』
『帝国の逆襲』に関する大特集。前半はリチャード・エドランドへのインタビュー。作品ごとではなく常設のエフェクトスタジオとなったILMの出発点であり、そのあたりもふれている。あのスノー・ウォーカーやトーントーンのエフェクトについて語られており、どうしてもそれが読みたくて映画を一回パスして、これも出版当時に購入しました。『スター・ウォーズ』が旧来のテクニックを上手に消化して発展させていることにあらためて驚かされる。この号の内容ものちに新版の特別号「ILM & STAR WARS」でも読むことができる。なおおまけとして来日していたリック・ベイカーとマーク・ステットソンのインタビューも収録。
1984.11.30発行 ☆☆
9 『2010年』
『2010年』は作品としての評価が低いため視覚効果も不当な扱いを受けてしまっている作品だが、EEGの後を引き継いでボスフィルムを設立したリチャード・エドランドの仕事ぶりは本当に素晴らしかった。結局技術が進んでもそれを使いこなせる能力が重要であることがわかる好例なのかもしれない。久しぶりに単独作品での特集となった本号それを反映して中身の濃いレポートとなっている。いまだにこれを超えるモーションコントロールエフェクトの宇宙モノはないと思っている。
1985.4.1発行。 ☆☆☆
10 『ターミネーター』
『スター・ファイター』

『ターミネーター』ほどの低予算作品でもきちっととりあげるのがシネフェックスのよさだが、中身はいまいち。しかし、いわゆるCG映像が本格的にフィーチャーされた作品として『トロン』に続く作品として知られる『スターファイター』の方には、加えてコンピューター映像黎明期にあたる1975年ごろからの概要も解説されており、現在のデジタルエフェクツの流れを把握する上でも重要な出来事が並べられている。技術的にはかなり稚拙な段階だが、それでもどのような方向を目指すべきかを的確に述べているのはさすが。
1985.7.1発行 ☆☆☆
11 ウィリス・オブライエン特集
5号と並んで文献として本当に貴重な11号はモデルアニメーションのパイオニアである『キングコング』のウィリス・オブライエンの特集。初の縦組み編集でオブライエンの評伝といってもよいその中身は、この号だけ最後の最後まで入手が困難で大変な思いをしました。でもそれだけの価値があり、レイ・ハリー・ハウゼン以前の視覚効果マンの栄光と悲運を鮮やかに切り取っていて、物語としても面白い。
1985.11.10発行
 ☆☆☆☆
12 『コクーン』『グーニーズ』
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

この号には巻末にも次号予告の欄がなく、結果的に最終号となってしまった12号はILM特集。なのだが珍しく流行に左右されてしまったようなつくり。そもそもエフェクツ的にも歯ごたえのない作品が3本並べられてしまったので、内容的にもつまらない。それが何かを象徴していたのかもしれない。
1985.12.20発行 ☆☆