4月22日お台場にオープンしたシネマメディアージュ。ソニーが企画した娯楽施設「メディアージュ」の中にあり、またデザインや最新の音響技術などのノウハウを提供、東宝が運営しているということでも話題の映画館に、5月2日さっそく出かけてきました。地理がわからない方に説明しておくと、新橋駅から新交通システム「ゆりかもめ」に乗って14分、台場駅下車、徒歩1分(実質5分?)。なお「メディアージュ」自体はお台場海浜公園とのほぼ中間にありますが、台場駅からだと「アクアシティお台場」(正確に言うと「メディアージュ」もこの建物の中にある)を通って行くことが出来るので便利かもしれません。さて施設もおさらいしておきましょう。 ・スクリーンは全部で13。DLPでの上映可能。 また将来のデータ配信による上映にも対応。 ・全館SDDS+SRD-EX (dtsは全館機器が対応。 デコーダーが3台で1、2に常設。移動可) ・全館遮音性能はNC25レベルを実現。 これはTHXシアターの基準の1つでもある。 では出発! |
うわあ、テーマパークみたい! とにかくキレイ! | |
さてまずはチケット購入。チケットカウンターは3Fにありました。さすがに13スクリーンもあるので、チケットブースの数も多数。ほとんど室内型テーマパークに近いノリです。ちなみに東宝直営ですので映画サービスデー、金曜初回割引、ペルソナカード提示、JCBカード提示割引は同様。さらに毎水はレディースデー割引です。(駐車場割引もありますが、完全に無料になるわけではないのは残念)。レイトショーは20:00以降の上映回が対象となります。全館前回全席指定ですが、座席表が用意してあり、席がある程度リクエストできるのは嬉しいです。モニターでは上映回などがわかりますが、デジタル音響フォーマットは確認できませんでした(これがあとで「!」というハプニングのもとになるのですが) |
チケットを買ったらエスカレーターで1Fへ。これがびっくりするぐらいきれいな吹き抜けのアトリウム。ホテルですね、これはもう。ロビーには売店があり、映画館はそれを取り囲むようにしてレイアウトされています。コンセッション(売店)向かって右側にシアター6〜12までの、左側に1〜5までの入り口があります(すぐそばにサービスカウンターもあります)。また特筆したいのはトイレ。すごくきれいです。こういう配慮はありがたく思います。ちなみに入り口にはテーマパークのようなチケットを通す機械がありますが、これはプリペイド方式のファンカードのためのもの。1度登録すると次回も同じカードで使えます。またチラシがたくさん置いてあったのも嬉しかったです。うれしかったのがパンフレット。「ザ・ビーチ」のパンフはなーんとシアターネームが入っていた! これは感激しました。でもホットドッグの味はイマイチ。こういうのがおいしいかどうかって重要ですよ! |
ボーン・コレクター(シアター8 2000/05/02 17:30) | |
いよいよ鑑賞。まずは「ボーン・コレクター」をシアター8にて。実はこの作品を選んだのには訳があります。ここは知っての通りソニーが関わっていますが、ソニー・ピクチャーズはSDDSというデジタル音響フォーマットの普及をはかっています。その旗振り役の意味もこのシアターはあるのですが、残念ながら開館時の上映作品でSDDS音響対応はこの作品だけだったのです。そこでおひざもとの音を聞きたくて、これを選びました。ちなみにシネマメディアージュではプリントに複数のデジタル音響が記録してあった場合の優先順位は1:SDDS 2:SRD-EX(SRD) 3:dts となるそうです。さてシアター8は座席数241のこの中では4番目に大きな映画館。残念ながら入り口にもWMCなどのように音響フォーマットは表記されていませんでした。館内に入って興味深かったのがリアスピーカー(もちろんソニー製)の設置スタイル。THXシアターのセオリーとして、リアSPは壁面に埋め込まず、壁面にとりつけるというのがあり、近年の映画館ではこれがはやりとなっています。が、ここは壁面には埋め込んでいないものの、波形状にカットしてある壁面の一部が穴のようになっていて、そこに設置されていました。つまりスピーカー自体は出っ張っていません(うまく説明できなくてスミマセン)。これは面白いアプローチだと思いました。シートはゆったりで程良い硬さ(ここにはうわさのプレミアシートはありません)。ドリンクホルダーは浅め。スクリーンの大きさも話によるともう少し大きくできたそうですが、消防法とのからみで、この大きさになったそうです。まずはバランス良くまとまった映画館という印象です。さて音響ですが・・・。本編上映が始まって異変に気づきます。この音はデジタルじゃない!!! なんでぇぇぇと心の中で叫びつつ鑑賞。オープニングにも音響トレーラーはありませんでした。アナログ音声は合格点。へんな響きもなくいい感じでしたが、何か特徴を感じたりはしませんでした。 | |
ハプニング発生! なんでアナログ?? | |
さてさてこれはおかしいと思い、シアター8出入り口にいる背広姿の係員に質問。 「あのー、今日のデジタル音響のフォーマットを知りたいのですが・・・」 「すみません。ちょっとわからないのでサービスカウンターの方へお願いします。」 おっとやはりオープンまもなくだから仕方がいないのかなあ。(ちなみに全館THXを売り物にしているVC市川コルトンプラザは問い合わせが多く、スタッフはその日の音響フォーマットを書いたリストを渡しているそうです)。そこでサービスカウンターにいらっしゃった女性に質問。すると 「全館SDDSとSRD-EX対応なんですが」との答えだったので、そうではないことを説明すると 「エンドクレジットでは確認できませんでしたか?」と聞き返されてしまいました。ご存じの方も多いと思いますが、今はSDDS、dts、SRD全種の音響がクレジットされる作品が当たり前(クレジットされていなくても、それ以外の音響フォーマットでの上映は日常茶飯事) クレジット下には"in selected theatres" とあるわけですから対応劇場かどうかは映画館で聞くしかありません。そこで説明すると他の男性係員が対応してくれました。するとびっくり!な事実。 「実は今日から「ボーン・コレクター」はSR上映です」 ガーン! やっぱりい! しかもなんだその今日からはというのは! どうやら説明によると昨日までSDDSで上映していたところ、再生が不安定でクレームが何件か来たらしく、もうひとつ記録されていたSRDでもダメだったらしい。結局SRが一番安定していたのでやむを得ずそうなったようです。ただ唯一のSDDS作品を上映できないのはこちらとしても残念で・・・とのことでした。 サービスカウンターのお2人の方は親切に対応していただきました。でもでも! 意見は言わせてください。まず私、アナログ上映だと事前にわかっていたら見ませんでした。正直トラブルが原因とわかっていても納得がいきません。同じ値段でそりゃないよと思います。やはり事前に音響フォーマットは知らせる手段を確保してほしいと思います。あっ、「係員に聞いてください」というのはなしですよ。というか時間がなかったり、恥ずかしかったり(笑)、また相手がどう見ても詳しくなさそうだったりすると(失礼な言い方スミマセン)聞き難いのです。ぜひ考慮してください。 |
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ザ・ビーチ(シアター2 2000/05/02 20:15) | |
さてもう1本、「ザ・ビーチ」をシアター2で鑑賞。SRDでの上映でしたが、やはり音響フォーマットの表記はなく、トレーラーの上映もありませんでした。ここは座席数319で2番目に大きい。まず壁面の処理に目がいきました。残響をコントロールするために壁面の形状を設計するわけですが、波形になっていて、これは映画館というよりもコンサートホールに近い発想。今までの東宝直営館だけでなく、他の映画館でもあまりみられないコンセプトです。さらにリアSPはシアター8と同様の処理でした。またここにはウワサのプレミアシートがありました。まあ座席自体は見た感じ違いを顕著には感じませんでした。でも専用のラウンジがあるそうです。また電話だけでなくネットでも予約が出きるそうですから、今度試してみようと思います。さて音ですが、ソニーがということで、今までの東宝直営館とは傾向がまったく違うのは当たり前。以前同様にソニーが設計の段階から関わり、音響機器すべてソニー製という京都のイオンシネマ久御山で鑑賞した際、そのくせのある低音が異常なほどに響き渡る人工的な音場が個人的に好きになれなかったので好感が持てました。音の定位はすごくてデジタル音響の申し子のような音源を意識させない移動感。この点はスゴイです。ただ個人的に言うならばセリフのなり方は私の好みではありませんでした。合格点は充分出せるぐらいレベル自体は高いので、もうここまでくるともう後は個人の嗜好の問題ですね。まだオープンしてまもなくでこのレベルですから、素性のよさは充分うかがえました。気になったのが映写のこと。画面全体がカンペキにピントを合わせるというのは物理的に不可能に近く、ほとんどの映画館はフォーカスをセンターではなく字幕で合わせる傾向があります。ここもそうだったのですが、エンドクレジットの際にスクリーン上部がかなりぼけてしまって字が読みにくいかなと感じました。 | |
器は最高レベル。問題はこれから | |
近所にシネコンがある方は行くかどうか迷うところでしょう。私なりの結論として1度は、わざわざ出かけるだけの価値はある映画館だと思います。ただしこの「1度は」がくせ者で、他のシネコンとの差別化はこれから徹底していかないと厳しいかなという部分もあります。なにしろライバルはたくさんいます。まずは有楽町・銀座地区の"身内"である東宝系映画館。そしてもう1つのライバルは言うまでもなく他のシネコンです。もはや音や設備だけでは個性になりません。プレミアシートもオープン当初の一過性の話題にはなりますが、それに座りたいがためにくるお客さんは少ないのではないでしょうか。設備は一級、話題性も充分とスタートラインを間違えずにオープンしたことで映画ファンは期待しています。これからの運営に注目です。 |
文:じんけし 2000.05記