IMAXデジタルシアターレポート 2
その1 その2

『トランスフォーマー/リベンジ』IMAXバージョン
(2009.06.19 109シネマズ川崎 スクリーン7)

 地元のシネコンですのでよく足を運んでいたのですが、IMAXは大々的に告知されていました。スタッフはなんと全員IMAXロゴ入りのポロシャツ。かっちょええなあ、いいなあ(笑)。基本はIMAX-MPXなので既存館の改装。しかし通路などはIMAXのロゴがいやでも目に入る感じでした。
 まず注目のスクリーンサイズですが、予想はしていたものの過去体験してきた常設のIMAXシアターよりはかなり小さく感じました。目測ですが縦は12mぐらいでしょうか。アイマックスシアターとしては小さめなのは事実だと思います。今回の改装でスクリーンを新しい物にしてからは公式サイズは発表されていませんが、ひと回り小さい印象です。

過去筆者が体験した常設館の
スクリーンの大きさ

東京アイマックスシアター ※閉館
(現テアトルタイムズスクエア)

縦18m×横25m
(左写真は場内の様子)

品川アイマックスシアター ※閉館
縦16m×横22m

サントリーミュージアム天保山
縦20m×横28m
 ただこれには劇場の設計も大きく関係してきます。というのもIMAXの常設館は大きなスクリーンを観客に実感させるためにスクリーンと客席の距離を近めにとりました。これは大きなスクリーンでみた時に前席の観客の頭が重ならないようにするための配慮でもあり、スクリーンの輝度にも関連がある工夫です。今回客席側の根本的な改装は行っていませんので、一般的な映画館でみやすい席ですと迫力不足になりますし、客席の位置で印象が変わるように思います。
 また常設館はかなりきつい傾斜を設けて前の人の頭でみえなくなることがないようにしました。しかし今回の改装で床から天井まで目一杯の空間を利用しているので位置によってはスクリーンがみにくいかもしれません。実際上映中に観客がトイレなどで移動するとどうしてもスクリーンを遮る形になります。かつての映画館では存在していた光景ですが、シネコンのスタジアムシートが一般化している今では珍しいかもしれません。これは上記写真や東京アイマックスシアターの館内図(左)をみてもよくわかります。

 さらにあれっと思ったのが『トランスフォーマー/リベンジ』がスコープサイズではなかったこと。IMAX-DMRでせっかくオリジナル通りのスクリーンサイズで楽しめるとおもっていたのに残念です。スコープサイズならIMAXカメラで撮ったシーン(基本は1:1.44)はすぐわかるだろ?と思っていたのですが甘かった! ほぼビスタに近い感じがしました。これは他のシーンとの違和感をなくすためなのか、このサイズでオリジナルサイズで上映すると、大きな劇場と画面サイズが遜色なくなってしまうからか、正直勘ぐりたくなりました。そのIMAXカメラでの撮影シーンがあるとのことでしたが、これはよくわかりませんでした。おそらく天地がやや広がってスクリーン全面に上映されていたときがそうなのであれば、気がついたのは以下のシーン。
●冒頭の古代のシーン
●オプティマスが森の中で主人公を守りながら闘うシーン
●終盤、デバステーターがトランスフォームして、吸い込もうとしているシーン。
なおIMAX版は追加シーンがあるとのことでしたが正式な情報は得られませんでした。ただ上記のシーンがそのまま追加シーンではないようです。 

画質はさすがにIMAX。クリアネスという意味では今までのデジタル上映システムのさらに上を言っています。が、音はIMAXと呼ぶには残念な感じ。あの何というか「やりすぎな」ぐらいの響き方がしません。こぢんまりした感じで良くも悪くも109シネマズの個性のままです。

結論 We can't think BIG!
 ではこれが差別化を図れるほどのものか。これはかなり微妙だと思います。まず大きなスクリーンを求める客はもっと大きなスクリーンで楽しめる場所にいくでしょう。単純に考えれば大きなスクリーンを求めるのであれば最前列にすわればよいわけです。唯一ここなら他のシネコンと違って確実にキャパが大きなところでやると明確な点ぐらい。『トランスフォーマー/リベンジ』の客足が落ちても安心です。豊かなサウンドを求める客にはどうか。これもここより素晴らしい音をきかせてくれるところはごろごろしています。3Dならどうか。RealDやドルビー3Dなど次々と3Dのシステムが登場している現状では明確なウリにはなりません。強いて言うならIMAXデジタルの画質の良さと、IMAXデジタルのロゴに惹かれる人にしか、現状では価値を見いだせないのかも知れません。

 はっきり言ってしまいます。これはまがい物と呼ばれても仕方がありません。少なくとも109シネマズ川崎の上映ではIMAXの真の価値を知ることはできないでしょう。私が感動したIMAXはこんな次元ではなかったはずです。物理的に大きなスクリーンを観客が「大きい」と実感できないかぎりIMAXではないのです。なぜならそれがIMAXのワンアンドオンリーであった存在意義だったからです。もはや1000席オーバーの劇場は新宿ミラノ1にしか存在せず、一般劇映画の大型上映システムはIMAXだけが現役としか言えない状況です。そんな中、こういう形でしか生き残れないのか。本物のIMAXサイズを体験したことのある人間にとって、それはある意味、厳しい現実をつきつけられたような気がします。

文:じんけし
(2009.07.05記)

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