この作品リストをみるとケイブルホーグという会社が残してきた仕事がいかに素晴らしいかがわかる。たしかにここにある作品はけっして映画興行街のメインストリームにはならないし、またこの作品ばかりをみているのも、それはそれで変な気はするが(笑)、しかしけっして見過ごしてはならない作品ばかりであることには間違いない。なぜならここに登場する作品は個性的で、ただ地味とか、わかりにくい題材とか、古いとかいう理由で、映画館にかからなかっただけの作品なのだ。映画がおもしろいかおもしろくないかは我々観客が決める。そういう意味ではケイブルホーグは観客をいかに信頼しているかがわかる。ケイブルホーグという会社がどのような会社か、それはこの作品リストが如実に物語っているといえよう。

新作(製作より5年以内に日本公開されたもの)

邦題 製作 作品コメント:赤色はケイブルホーグの小林さん。青色はじんけしです。
子供たちをよろしく 1983  
エリザとエリック 1987  
肉体と財産 1986  
タルコフスキー in サクリファイス 1989  
タルコフスキー in ノスタルジア 1984  
ハルムスの幻想 1988  
サンタ・サングレ聖なる血 1989 ホドロフスキーの新作公開にさっと手を挙げられる人、配給関係者に何人いるでしょうね(笑) ぜひぜひいつの日にかエル・トポを!
ステップ・アクロス・ザ・ボーダー 1989  
キャンディ・マウンテン 1987  
ボーダー・レディオ 1988  
グルジェフ 神聖舞踏 1988  
春にして君を想う 1991 もう寒い映画! でも美しい映画!
エル・マリアッチ 1992 のちにこれをもとに『デスペラード』を作ってブレイクするロバトート・ロドリゲスの処女作。
シャロウ・グレイブ 1995 「トレインスポッティング」のダニー・ボイルの処女作。
『トレインスポッティング』とは比べ物にならないくらいに傑作です。見えない恐怖感、精神に異常をきたす瞬間。とにかく怖いです。私は劇場でひとり震えていました。しかし、最後のオチは最高に面白いです。(と、私は思っています)
ミュート・ウィットネス 1995  
ガンモ 1997 現代の若者の実態を生々しく描写した『KIDS』の脚本で注目を浴びたハーモニー・コリン。一般には嫌悪されるような題材を扱いつつも、彼のまなざしはあたたかく、優しさに満ちています。
ムービー・デイズ 1994  
アンダー・ザ・スキン 1997 突き刺さるような痛みを感じつつも、みずみずしい女性の感性で描かれた
作品。主人公アイリスの痛みを共に味わい、アイリスが自分を見つけたとき、観ているこちらも、一緒に成長したような気がします。
リュシアン 赤い小人 1998 自分らしく生きる意味を問う作品。フェリーニのようなモノクロが美しい。最近観たモノクロ作品の中ではいちばん美しいと思いました。音楽も良く、いつまでも心に残ります。
深紅の愛 DEEP CRIMSON 1997 カルト作品『ハネムーン・キラーズ』をメキシコの巨匠リプステインが甘い渇きと切なさをもって、情熱的にリメイク。今の時代に、これだけ細かい演出のできる監督はいないのではないでしょうか。光の使い方も絶妙。音楽がとにかく甘く美しいです。

旧作(制作から5年以上経過したもの。リバイバル・劇場初公開問わず)

ミラレパ 1973 記念すべき配給第1作目はリリアーナ・カヴァーニ作品。
世にも奇妙な物語 1967 3人の名匠によるオムニバス映画。首飾りの話が怖すぎ。
ファンタスティック・プラネット 1973 もう言葉には出来ないくらいに、とにかく大好きな作品です。この時代にこんなものが、という驚きと賞賛。入社前にこれがケイブルホーグ配給だったということを知り、さらに感動しました。
すでに伝説と化しているルネ・ラルーのファンタジーアニメーション。これを日本に紹介しているだけでもすごすぎ。
インディア・ソング 1974  
ヴェネツィア時代の彼女の名前 1976  
ヴィスコンティの肖像 1976  
白夜 1957  
アントニオ・ダス・モルテス 1969 これ、相当凄いらしいです。いまだにビデオ屋でお目にかかれません(涙)
黒い神と白い悪魔 1964  
注目すべき人々との出会い 1979  
ピンク・フラミンゴ 1972 一連のジョン・ウォーターズ作品公開のきっかけとなった怪作。これを日本でやるのは大英断としかいえない内容ですが、ウォーターズを知らない不幸があったかもと思うとぞっとする。
フィメール・トラブル 1974  
セコーカス・セブン 1980 ジョン・セイルズの長編デビュー作にして人間ドラマの大傑作。「再会の時」はパクリだと噂になったことも。
サイレント・ランニング 1972 視覚効果の巨匠ダグラス・トランブルの傑作SF。なぜかずっと未公開で何度かTVでカット版が放送されただけだった。
盗まれた飛行船 1966  
ザ・ブルード 怒りのメタファー 1979 クローネンバーグ作品の中でも後の彼を考える上では大変重要な1本。
ステッペンウルフ荒野の狼 1974  
悦楽の闇 1975  
ランボー地獄の季節 1971 私の知人でスタローンの新作と間違えた人がいるらしい(笑)
彗星に乗って 1970  
狂えるメサイア 1972
魂のジュリエッタ    
青春群像    
フェリーニ/サテリコン日誌    
捕らえられた伍長 1961  
毛沢東からモーツァルトへ 1984  
寄宿舎 1963 この作品の初公開に涙した女性は多いです。
殺し 1962 ベルトルッチの処女作。
ロベルトは今夜 1977  
カルテット 1981 アジャーニは本当に美しいです。
リアンナ 1983 セイルズを知らないのは本当に不幸です。
クレーヴの奥方 1961   
ルードウィヒ復元完全版 1972 初公開時は3時間4分。
革命前夜 1964 ベルトルッチの2作目。
ジャック・ジョンソン 1971  
冒険者たち 1967 リュック・ベッソン『グラン・ブルー』の元ネタとも言われています。昔、夜中に観ました。あまりの美しさにとにかく感動しました。ケイブルホーグと知って、また感動です。
生き残った者の掟 1966  
狩人の夜 1955 この刺青!!!最高ですね。まるで夢の中のような映像世界。
怪優チャールズ・ロートンの初にして唯一の監督作品。トリュフォーも絶賛したにもかかわらずその内容からハリウッドでは完全に無視された。その魅惑的な映像と残酷な物語はまさに寓話。ロバート・ミッチャムはまじ怖い。指に彫られた愛と憎しみの物語の元ネタはここ。シェリー・ウィンタースの美しい水死体が脳裏から離れない。
フリーダ・カーロ 1984  
ブラック・ムーン 1975 ルイ・マル渡米前の最後の作品。
ヘンリー 1986 後のシリアルキラー映画に多大な影響を残すジョン・マクノートンのデビュー作。マイケル・ルーカーがまじめに怖いです。
さらば青春の光 1979 これを観るとバイクに乗りたくなりませんか? 『イージー・ライダー』に次ぐ、私の好きなバイク映画です。
もはや説明不要。ザ・フーの「四重人格」をモチーフにしたモッズムービー。スティングも出てます。
モア/ピンク・フロイド 1970 けだるいトリップ感覚は最高です。ただし、虫嫌いな私は、トリップ中(確か
そんなシーンだったはずです)の虫がうごめくシーンに、トリップしました・・・。
「運命の逆転」などのバルベ・シュローダーのデビュー作。
希望 テルエルの山 1939  
スウィート・スウィート・バック 1971 ブラック・ムービーの雄、メルヴィン・ヴァン・ピープルズの作品。息子のマリオ(ニュー・ジャック・シティの監督・主演)も出てます。
傷ついた男 1983  
グレヴァン蝋美術館 1958  
冷酷な美男子 1957  
殺しが静かにやって来る 1968  
J&S さすらいの逃亡者 1973  
バルスーズ 1974  
ジャンゴ・ラインハルト 1958  
フリークス 1934 これを映画館でみている人、絶対に自慢していいです。はたしてこれから上映されることはあるのでしょうか。初公開時は「怪物団」という邦題・・・
冬の猿 1962 これが日本でなぜかずっと未公開だった。ヴェルヌイユ+ギャバン+ベルモンド、唯一の顔合わせ作にして永遠の名作。
ガラスの墓標 1969  
シッダールタ 1972  
マドモアゼル a Go Go   とにかくキュート!!

カルト・クラシックスシリーズ

ウィッカーマン 1973 大好きです、これこそカルト中のカルト!現実なのかよく分からない話、奇妙なかぶりもの、怖くておかしな感覚、とにかく言葉にし難いくらいにすごいです。素晴らしいです。
記念すべきカルトクラシックスシリーズ第1弾にして、驚愕すべき大傑作。「探偵スルース」のアンソニー・シェイファーが脚本。もうあの最後の唄が耳から離れません。WOWOWで2月にオンエアされます!
血を吸うカメラ 1960 あの「赤い靴」のマイケル・パウエルが作ったサイコホラー。
パフォーマンス 1968 麗しきミック・ジャガー。妖艶です。
ミック・ジャガー主演のれっきとした映画。撮影はニコラス・ローグ。
地球に落ちてきた男[完全版] 1975 ながらくカットバージョンだけしかみられなかったニコラス・ローグ監督、デビッド・ボウイ主演の異色作。映画祭などの特別上映以外で初ロードショー。
ジギー・スターダスト 1973 デビッド・ボウイ!
ワイルド・パーティ 1970 ラス・メイヤーの最高傑作ではないでしょうか。ストーリーも面白いし、ラストも意外。そしてきわどい。女の子たちがかわいい!!
ラス・メイヤーをまじめに紹介しようという姿勢がまず素晴らしいです。
チャパクア 1966 ウイリアム・バロウズも出演、ビートニクは必見です。私が神と崇めるラヴィ・シャンカールのシタール、最高です。
トゥナイト・レッツ・オール・メイク・ラブ・イン・ロンドン 1962  
ワイト島1970 1995 ウッドストックに並ぶイギリスのロック・フェスティバル。しかし、ロックはビジネスと化し、ラブ&ピースは過去のものとなり、カウンターカルチャーの終焉を目の当たりにします。
フィルモア最後のコンサート 1972 この時代のポスターって、どうしてこんなにかっこいいのでしょう。フィルモアのポスター集を買ってしまったほどです。
デッドやジェファーソン・エアプレインが拝めるロック・ドキュメンタリー。
ラストワルツ 1978 スコセッシがザ・バンドを描いたドキュメンタリー。
ハネムーン・キラーズ 1970 オペラ作曲家レナード・カッスル監督のカルト作品。 観ているうちに看護婦マーサの虜になります。

アレックス・コックス監督作品

ストレート・トゥ・ヘル 1987 今は大女優となったコートニー・ラヴも、ジョー・ストラマーも出ています。
やりたいほうだいってこういう映画(笑)
PNDC エル・パトレイロ 1991 コックス作品への製作参加1作目。きちんとクレジットされています。
シド・アンド・ナンシー 1986 アレックス・コックスだけでなく、ゲイリー・オールドマンにも大きなターニングポイントとなった作品。
デス&コンパス 1996 なんとコックスがホルヘ・ルイス・ボルヘスの映像化に挑んだ意欲作。ケイブルホーグは制作にも協力。
ザ・ウィナー 1996 サントラがかっこいいです。カジノものの映画って、サントラがいいんです。

監督別(3作以上配給。特集上映・連続上映含む)

エド・ウッド
プラン9・フロム・アウタースペース 1956 バートンの映画のモデルにもなったエド・ウッド監督の映画史上最低映画とよばれる作品。
グレンとグレンダ 1953  
怪物の花嫁 1966  
サム・ペキンパー
ワイルド・バンチ オリジナル・ディレクターズ・カット 1969 当初日本で出ていたビデオではすっぽり抜け落ちていた重要なシーンを復活させたバージョン。私、パンテオンでの上映でみられました。
ワイルド・バンチ/アルバム・イン・モンタージュ 1996 ケイブルホーグの根岸社長を感涙(?)させた撮影現場のペキンパーの勇姿。
戦争のはらわた 1977 いわずとしれたペキンパーの大傑作。シネアミューズは珍しく思いっきり男くさい雰囲気だったとか(笑)
男くさい中で観ました。ペキンパーは映像と色合いがかっこいいです。銃口から放たれる閃光を、今まで、こんなに美しいと思ったことはありませんでした。
ジョン・フォード
わが谷は緑なりき 1941 これぞ家族ドラマ。フォードの叙情性を存分に味わえる。
周遊する蒸気船 1935 ウィル・ロジャーズ三部作の最後の1本。
若き日のリンカーン 1939 ヘンリー・フォンダがリンカーンを演じています。
アイアン・ホース 1924 フォード大監督への第一歩となる作品。
三悪人 1926   
四人の息子 1928   
プリースト判事 1934   
真珠湾攻撃 1943   
ドキュメント真珠湾攻撃 1943   
ミッドウェイ海戦 1942 ドキュメンタリー。その戦闘シーンの迫力は本物で、「ミッドウェイ」の戦闘シーンに使い回されたほど。
俺は善人だ 1935   
ジャン・コクトー
双頭の鷲 1947  
恐るべき親達 1948  
詩人の血 1930  
サント・ソスピール荘 1952  
オルフェの遺言 1960  
ジャン・ピエール・メルヴィル
恐るべき子どもたち 1949 監督がメルヴィル。脚本がコクトーです。
賭博師ボブ 1955  
マンハッタンの二人の男 1958  
フリッツ・ラング
死刑執行人もまた死す 1943 ケイブルホーグの功績の一つにフリッツ・ラングをとりあげたことがあるといえてしまうぐらい、一連のラング作品で目から鱗の方は多かっただろう。もっともっと評価されてもいい大監督です。
恐怖省 1944  
外套と短剣 1946 原爆にまつわる話。こんなテーマをこの当時に作る過激さ!
暗黒街の弾痕 1937 ラングの映像の美しさを感じました。光と影がとにかく美しい。『俺たちに明日はない』も大好きなんですが、これはとても切ないです。
これ「俺たちに明日はない」とモデルは一緒なんですが、タッチはぜんぜん違います。
ムーンフリート 1955  
1931 サイコキラーの元祖。
マンハント 1941  
ビッグ・ヒート 復讐は俺にまかせろ 1953  
死刑執行人もまた死す/完全版 1943 初公開時は120分だったが、これは134分バージョン。
大いなる神秘/王城の掟 1958 ラングらしからぬ、壮大なスケールで描く娯楽作品。 しかし最後まで飽きさせず、本当に楽しめます。
大いなる神秘/情炎の砂漠 1958  

音楽関係

チャック・ベリー、ヘイル・ヘイル・ロックンロール 1987  
ハーダー・ゼイ・カム 1973 ジミー・クリフ主演の青春映画(かな、一応)。レゲエ好きにはたまらない1本。
ドント・ルック・バック 1967 ボブ・ディランのドキュメンタリー。
ザ・グレイトフル・デッド・ムービー 1977  
ザ・ピンク・フロイド 1994  
ジミ・ヘンドリックス 1973 彼はすごく控えめな人でした。世界中に名を知られながらも、”天才”という賞賛に「やめてくれよ、そんなの大げさだぜ」というように照れくさそうに笑う、何よりもギターが大好きな、真面目な人でした。多くのライブ映像に見るかっこよさはもちろんですが、何よりも彼の優しさ、人柄を感じさせるドキュメンタリーになっていると思います。そして、彼が他のミュージシャンに与えた影響がどれほどのものであったかを感じることができます。 
イマジン 1988 この一本に、彼の素敵なところも、嫌なところも込められていると思います。たった一本の映画が、一人の人間をここまで捉えていることはすごいことです。ジョン・レノンという人間のすべてが、ここに表れていると思います。そしてまた、素敵なところも嫌なところも、すべて彼の魅力である、ということに気付かされます。ジョン・レノンという人はなんて人間くさい人間なんだろう、と。真っ白な気持ちになります。何度か泣きました。 

バレエ映画

ピーター・ラビットと仲間たち/ザ・バレエ
1971 ケイブルホーグはバレエ映画にも強いんです。
ヌレエフ I AM A DANCER 1971