2001年2月マンスリースペシャル
映画大国アメリカの人々は字幕付きで映画をみることに抵抗を感じる人が多いというのは有名な話ですが、実は現在日本は世界でも有数の映画の多国籍化が進んでいるところで、日本ほど世界の映画をたくさんみることができる国はありません。ハリウッドにとっては海外では最大規模のマーケットですし、さらにはミニシアターの定着によって十数年前には考えられなかったぐらい、多様な国の多様な作品を映画館で楽しむことができます。かつては戦後規制によって輸入総数(本数ではなくフィルムのフィート数に制限があり、カットされた短縮板が多かったのはそれが一因であった)の上限という枠に閉め出された名作があり、とてもロードショーでは無理だとお蔵入りになった作品があり、地方公開のみで終わったとか、ビデオのみだとか、クリエイターにもファンにも聞くにしのびない話が山ほどありました。そんな頃から考えるとなんと恵まれた時代になったのかと思います。
だがあえて私は映画ファンのみなさんにたずねたいのです。あなたの映画的欲求はみたされていますか? と。むしろみたい映画はたくさんあるけれど、何をみていいのかわからないという不可思議な状況になっていないでしょうか。たくさんみているのに前ほど心動かされる作品に出会えていないと感じてはいないでしょうか。宣伝に踊らされていると思ったことはないでしょうか、と。
配給は文字通りクリエイターと映画館を結ぶ橋渡しをする仕事です。極論するならば外国映画は配給会社のお眼鏡にかなわなければ、日本の映画館で陽の目を見ることは決してないわけで、日本の映画文化の方向性を左右しかねない重要な仕事。そんな最前線で何が起きているのかを知りたかったのがこの特集の趣旨です。
今回特集するケイブルホーグという会社は小さな配給会社です。名前をご存じない方も多いでしょう。配給されている作品も正直とてもメジャーなものとは言えません。でもここであえてみなさんに考えていただきたいのは映画はみんな「マトリックス」や「アルマゲドン」「タイタニック」といったハリウッド作品ばかりでよいのかということです。万人に愛される作品はそれはそれで素晴らしいです。しかし個性が強くヒットしそうにないという理由で、興行会社から敬遠される作品が多いのもまた事実です(それはすでにこのサイトの過去の特集でもとりあげた問題ですね) 個性が強い作品は万人からは好かれないかもしれませんが、逆に一人の観客の人生を大きく左右してしまうようなパワーを持っています。私がなぜこの配給会社を気に入っているかといえば、そんな作品をたくさん紹介してくれているからです。何よりもふるい作品を大切にしてくれています。リバイバルや初公開にこだわっている配給会社。サム・ペキンパー作品「ケーブル・ホーグのバラード」の登場人物にちなんで社名を決めた配給会社。いい会社に決まっているじゃないですか!(笑)
1周年記念のマンスペ特大号。テーマは配給です。少しかたいテーマですが、ぜひお読みください。
内容
特集1:ケイブルホーグ・バンチ!
日本に多々ある配給会社の中でも、個性的な配給会社として知られるケイブルホーグ。
そんなケイブルホーグの成り立ちからポリシー、配給という仕事などについて、
ケイブルホーグの小林桃代さんにインタビュー。
特集2:ケイブルホーグ全配給作品
ケイブルホーグという会社がどのような会社か、この作品リストをみるとケイブルホーグという会社が
残してきた仕事がいかに素晴らしいかがわかります。
特集3:映画配給の長い道
華やかな部分であこがれている人も多いであろう映画の配給という世界。
では具体的にどんな仕事をしているのであろうか。主に外国映画の配給に関する話にしぼってまとめました。
編集後記